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結婚披露宴における音の演出のおはなし:日常生活と音楽と


やるぞドラマだメリハリだ

前に、番組制作という言葉をちょっと出しました。
地方や状況により差異はあるでしょうが、披露宴はだいたい2時間30分の長編番組です。ロマンチックにしようとバラッドばかりかけていたら客席では眠くなるでしょうし、あまりポップなのばかりだと全体的に軽いおざなりな仕上がりになってしまいます。また、料理の進み具合も考えないといけません。

幸いこの国日本には、『起承転結』という便利な言葉がありますから、これをもとに披露宴を組み上げていきましょう。この感覚は披露宴ばかりでなく、コンベンションやパーティにも通ずるものがあります。

念のため、『起承転結』 を展開しておくと、

  • 【起】 お話の始まり
  • 【承】 次のシーンへのきっかけ
  • 【転】 あれ?と思わせるアクシデント
  • 【結】 仕上げ。オチ。

これを『起結』のかたちで簡単化したモデルをひとつ。

『隣の家に塀ができたんだってね。』 『へえ。』
というギャグがありますが、なぜ、つまんねえぞと言いながら笑ってしまえるのか。

流れの中に動きがあるからです。本人は気持ちよく美しく歌い上げようとしているのに、『か〜ん』 と鐘ひとつで強制終了させてしまうNHKのど自慢と一緒です。もしあの鐘がないままフルコーラス歌いきって、事後審査なんてシステムだったら、ほんとつまんないと思いませんか? あの鐘への素朴な一喜一憂があるから、庶民に受けるのです。

『隣の家に塀ができたんだってね。』 『ああ、できてたね。』
うわっ、つまんね。ていうかただの普通の会話じゃん。これは、会話に動きがないからつまんないんです。このつまんなさが必要な場面もありますが、これはこの章で次に書きます。

『隣の家に塀ができたんだってね。』 『いやそれはいいからさ、ちょっと聞いてくれよ』
これだと塀のことなんかどうでもよくなって、その先の話が気になりますね。『へえ。』 とオチをつけたのとは別の動きがあります。

盛り上げたいところで派手な曲を使うのは正解です。でも、その直前に使っている曲も同じような派手さを持っていたとしたら、盛り上げたいところがかすんでしまいます。前後関係を考えて、盛り上げるとこまでタメてタメて一気に爆発! というような曲の選び方も必要です。

逆に、静かなバラッドで入場して、最後までマンチックにいきたいからとそれに続くケーキカットもバラッドを使ったとしたら、ケーキ(つまり新郎新婦)から離れた場所にいるお客さんには、今何をしているのかよく分かりません。

もっとも、曲によってはフェーダの使い方でものすごく効果的になることもあるのですが、基本はメリハリ、としておきましょう。バラッドからバラッドへの曲転換については、追々書きます。

構成のしかたの一例

四の五の書きましたが、理屈は抜きにして、思い切り単純化した披露宴を構成してみましょう。

  • 【1】 迎賓
    なんでもいいんですが、ウケとか感動を狙うところではありません。
    お客様の緊張を緩めながら、存在していないようで実は存在しているという音楽がちょうどいいです。ピアノトリオとか、バロックっぽいクラシックとか。オーケストラものは、ピアニッシモとフォルテシモの差が大きすぎて、難しいです。
    食事・歓談中もこれに準じます。会場しだいではカントリーやブルースなども。絶妙な退屈さ・単調さが必要です。会話や食事を邪魔しないために。

  • 【2】 和装入場
    長持唄、なんてのも1990年代後半年あたりまでは結構ありました。でも『和風』にこだわる必要はありません。洋楽の使用に関しては私の周囲でも賛否両論あるのですが、邦楽のしっとりしたあたりならOKです。
    と言うか、日本の古典的な音楽で入場に使える曲を選ぶほうが難しいです。

  • 【3】 プロフィール紹介
    最近は媒酌人不在の披露宴も多く、プロフィールをMCさんが取材(聞き込み)を基に行うケースが一般的です。
    声(つまりプロフィールの内容)を前面に出しますから、イージーリスニング的な感覚で優しさを感じられるのがいいですね。思い出の曲だからと何でも使ってると、曲に耳が行ってしまいます。
    割とマイナー(売れ筋でないという意味)で単調なのを選びましょう。ニュース番組や天気予報のBGMにもいいのがあります。

  • 【5】 乾杯!
    派手に行きましょう。会場の広さや雰囲気に応じて。
    短めの曲を選んで、その曲が終わるまではな〜んにもせずに、BGMを切り替えたところでたとえば祝電披露にいくのが自然です。

  • 【6】 洋装入場
    あまり難しく考えることもありません。好きな曲を好きなように使えるシーンです。『それが個性だよ』と言える部分です。それよりも、BGMや乾杯まわりなどの演出的に目立たないシーンの方が、選曲は難しいものなんです。

  • 【7】 ケーキカット
    派手に目立つ曲が分かりやすくていいです。直前の入場シーン(そうでない場合はその直前のシーン)での曲に覆い被さるような。
    実際にナイフが入ろうが少し手間取ろうが、MCのコメント(『ご入刀です!』とか)に合わせて、出足はうるさいぐらいにいきましょう。出足数秒をうるさくいったら、すっとフェーダーを少し下げて、MCさんの入る余地を作ります。

  • 【8】 両親へのメッセージ(多くは新婦から両親へ)
    どんなに演出がうまくいっても、ここを美しく作れないと台無しです。MCさんが代読したり新婦本人が読んだりしますが、基本的にインストを使うってのはプロフィール紹介と一緒です。
    ドラマなんかでいかにも泣かせてます、という曲が使われたりしますが、あれはちょっとうざいです。読む声を引き立たせるように、どこまでも優しい曲を。

  • 【9】 両親へ花束贈呈
    ここも美しく。手の読み終わり、たとえば『・・・・・・嫁ぐ日に、ますみ。』というのをじっと待ち、最後の『。』に一呼吸遅れて少し強めに音を出しましょう。
    全国のますみさん、ありがとう。

  • 【10】 お披楽喜 (地方により万歳三唱が伴う)
    もうロマンチックはいりません。乾杯のように派手に、エンディングを飾りましょう。

お客様は多種多様

上に書き出してみた構成は私が一般的に組みがちなもので、決して 『これがベストなんだろうな』 と決めつけないでください。
しかし、小さなお子様からご年配の方までが参加する披露宴を数百本こなす中で、自然にできてきた私の中での一応のマニュアルではあります。

新郎新婦も多種多様、列席のお客様も多種多様。このバランスを取るのは結構難しいです。Hip-Hopな二人のリクエストだからと最初から最後までそればかりじゃあ、ジイさんバアさんは疲れます。初孫の花嫁姿に感動、どころじゃありません。

二人のリクエストの受付(つまり打ちあわせ)については追い追い書いていきますが、新郎新婦とPAでどこに妥協点を打つか、『二人にとってちょと残念な披露宴』にならないように慎重な調整が必要なんです。まあ、昔みたいに手練手管の媒酌人が『こうでなきゃいかん!』と意地を張る時代でもなくなってきたので、だいぶ楽にはなりましたが。

あと重要な検討材料に、MCさんとのカラみがあります。祝電を読んだりいろんな案内をかけたりする時間でもある『食事・歓談中』に派手なBGMをかけていれば、本当に落ち着きのない、後味のすっきりしない仕上がりになってしまいます。

にぎやかな曲を否定してばかりいるようですが、そうでもなくて。たとえば、余興のオープニングやつなぎとして使うという方法もあります。 しばらくゆっくりとしたBGMでくつろいでいただいている中で、ちょっと強めに派手な曲をかけてあげれば、それがテレビの世界でいう『アイキャッチ』的な効果を持ってきます。MCさんがいちいち1から10まで案内しなくても、音でお客様の意識を誘導できるのです。

BGMと言うと、入退場やセレモニーに関わる演出部分に比べてかなり軽視されていると思いますが、それではあんまり面白くありません。少なくとも有線や一枚のCDをベタっと回しているようでは、ね。
まあ歓談中ならそれでもいいのですが、私は自分で選曲してMDにまとまてみたり、一枚のアルバムのベタ流しでも『ちょっとこれはどうかな?』というトラックを外したり、それなりに工夫しています。

今なら、適当にmp3なんかでPCに放り込んでおいて、foobar2000とかwinampm3u食わせてもいいしね。
たしかWindows Media playerでもm3uを扱えたと思うけど、fb2kとかwinampならクロスフェードができるし、キーバインドも自由なんで楽です。その中でもfb2kを使うことが多いです。winampは余計な機能が邪魔すぎて。

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余興と余興の間も神経を使うもので、私は余興1本につき1曲、選曲作業をしています。
たとえばカラオケが終わったところでMCさんのお礼のコメントが入りますが、『・・・ありがとうございました』を言いきったところでぽん、とその曲を出してあげるというやり方です。余興1本1本もひとつの『シーン』と捕らえ、シーンチェンジを明確にしてあげるのです。
こうしてあげればMCさんにもいいテンションがかかるみたいで、テンポの良い進行になります。


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